小冊子 think transplant Vol.5
ご家族の深い悲しみの中、ドナーの方の生前の臓器提供の意思、そのことを認めてくださったご遺族の方々に、言葉では言いつくせないほどの感謝の念を抱いております。
私は、十代後半より数度の心臓手術を繰り返しており、その後も容態は芳しくなく、1年の投薬治療を経て、移植登録を決意しました。待機中は、2年9ヶ月間、体外式補助人工心臓という器械に助けられ、生きながらえている状況でした。この器械は、お腹の上のポンプ(血が入り、身体に戻る袋状の容器)から、5mの管でこのポンプを動かす洗濯機程の大きさの駆動装置とつながれておりまして、その5mが私の行動範囲でした。もちろん、お腹の上に器械がありましたから、寝返りをうったり、入浴したり、前屈みになったりはできません。廊下リハビリで歩く際には、常にこの駆動装置を押していただく業者さんや医師、技師さんなどの数名の付き添いが必要で、この装置のバッテリーのもつ30分が部屋の外に出られる限界でした。さらに、この廊下リハビリも週3回だったので、他の日々は部屋の中だけでの生活でした。この度、この確かな命を引き継ぎましたことにより、私の生活は180度、いや、それ以上改善されたように思います。世界が、急に色鮮やかなものになりました。全てのことに、生まれた赤ん坊が感じるような新たな発見、喜びを感じています。
こうして正座をして、机を真正面にすえて文章を書くことができるようになることもずっと私の夢でした。心臓が悪かった時と違い、薬を飲まなくても尿がでること、食事が全て美味しく食べられること、寝返りがうてること・・・などなど可能になったことを挙げ始めたら、きりがないくらいの変化です。
今後したいことは、今まで家族や友人などに迷惑をかけた分、彼等との時間を大切にし、ゆくゆくはまた、何らかの方法で、大学教育を受けたり、自動車免許をとったりしたいと思っております。
今後も拒絶反応や感染症問題など決して平坦な道のりではないと思いますが、ドナーの方とそのご遺族のお気持ち、今回の移植にかかわってくださった皆様の努力と気持ちが、今の私のこの鼓動となっていますので、これを勇気の源に精一杯生き抜いていくつもりです。
この度は、本当に本当にどうもありがとうございました。
ドナーの方のご冥福を心から祈りつつ、失礼させていただきます。
ぼくは、じんぞう移植手じゅつを受けました。
今は とても元気にしています。
走っても しんどくなくなりました。
ご飯も おいしくてたくさん食べます。
おしっこも たくさん出ます。
とうせきをしなくてよくなって うれしいです。
これからは、学校にも元気で行けます。
いっぱい食べて いっぱい遊んで 大きくなります。
ぼくにじんぞうをくれて ほんとにありがとうございます。
ドナー様、ご家族の皆様へ
初めてお手紙を書きます。
ドナー様とご家族の強い意志と深い理解のもとで大切な肝臓をいただき、7ヶ月の息子の命を助けてもらい、本当にありがとうございました。
突然、劇症肝炎と診断されてから日がたつにつれ状態が悪くなり、小さなからだで一生懸命がんばっても肝臓の細胞は再生されないと診断されました。最終的には移植しかないと言われ、親からの移植はできないことで二重のショックでした。
しかし、どうにか息子の命を助けてあげたいと思い、大学病院の勧めで、家族で話し合い、移植希望登録をしました。脳死について知識のなかった私たちは、解らないなりに資料などを参考に勉強しました。脳死の判定のむずかしさ、支える家族の気持ちを考えると、たいへんな決断だと思い、胸が痛みます。
そのおかげでドナー様の肝臓をいただくことができ、大手術ができたこと、本当に幸福に思えます。そして、息子のからだのなかで、いただいた肝臓が着実に動いて働いていてくれます。
術後は、大きな問題もなく、どれもクリアできるほどのものでした。今、ベッドの上で動き回り、ミルクをおいしそうに飲む姿を見られるのもドナー様のおかげだと思います。
息子が大きくなり、話が理解できるようになりましたら、大切な肝臓をいただいて手術したこと、命の大切さを話してあげたいと思います。
手術をして約2ヶ月後、退院することができ、ドナー様ご家族の皆様に本人、家族一同お礼を申し上げます。
「生命」という何物にもかえがたいものをいただき、本当にありがとうございました。
拝啓
ドナー様から大切な肝臓をいただいてから一年が経とうとしています。
奇跡的にいただけたドナー様の肝臓が、当時生後7ヶ月の息子に移植していただくことができてから、一度も拒絶反応もおこさず、肝臓の機能も何の問題もなくこの一年間を過ごすことができました。
無事、満一歳の誕生日も迎えることができ、からだを自由に動かし、走り回り、言葉も増え、いたずらも盛んにする、こんな息子の日々成長している姿を見られるのも、ドナー様の肝臓が息子のからだの一部として働いてくれているからだと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。
節目ふしめに去年の病中の息子の様子を思い出し、現在の元気な姿に感謝し、涙が出る思いです。
ドナー様のご家族の気持ちを考えますと、複雑な思いですが、ドナー様とご家族の理解をいただけたこと、本当にありがたく思い、これからも一生大切にしていきたいと思います。
家族一同感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
寒さが続きますが、くれぐれもお身体に気を付けてお過ごしください。