臓器移植を受けたその日から、新しい人生がはじまりました。

私は、臓器移植手術を受けて約6年になりました。手術前は、自分で動くのもままならず、生死の境目を行ったり来たりしていました。
そんな私が、手術後1週間で、自分で歩くことができました。また、体が嘘みたいに静かで、苦しさもなく、すごく落ち着いていました。それからは、日に日に体調が回復し、今までできなかったことができるようになるたびに、感動の連続でした。そして、退院し家に帰れたときは、なんともいえない気持ちがこみ上げ、涙が止まりませんでした。移植手術を受けたからこそ感じるのかもしれませんが、命の大切さ、時間の大切さを、私たち移植を受けた患者は感じています。言葉で言うのは簡単かも知れませんが、脳死移植という医療は、ドナーとそのご家族の方はもちろんのこと、移植を受ける患者にとっても、とても大きな壁を乗り越えなければなりません。そして、その壁を乗り越えたからこそ感動も大きく、また、生きている時間を大切にしようと、前向きに頑張れるんだと思います。現在移植を夢見て、待機している多くの患者さんも、辛く苦しい体調の中、たくさんの壁と戦っていると思います。最後の壁を乗り越えて、私と同じ感動や喜びを感じてほしいと心から願っております。 移植後に結婚し、今年、子供を授かりました。子供が大きくなったら、「お父さんの体の中には、たくさんの人たちの心(気持ち・愛情)が詰まっているんだよ。そして、あなたが生まれたんだよ」と伝えたいと思います。ドナーとそのご家族の方、また、お世話になったたくさんの方々に、心より感謝申し上げます。そして、これからもよろしくお願いします。

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何とも言えぬ倦怠感と混乱している頭。全身麻酔が切れかけて徐々に覚めていく意識の中で鋭い痛みが走り「足曲げたらだめ、動いたらだめ!」と言う看護師さんの言葉で目が覚めました。
「そうだ、手術したんだ・・・」あれから7年。手術日と同じ毎月の日、感謝の気持ちで欠かさずお参りした1年、状態の安定しない2年目、手探りの3年目、やっと落ち着いた4年目。
元気にさせていただいた「感謝と何か役に立てること」は、まず私が元気になれた姿をたくさんの人に見てもらって、移植医療の理解を広めて、深めていただくことだと思っています。
私の新しい人生はドナーとそのご家族がいたからこそ・・・。
今年も元気に世界移植者スポーツ大会に参加しました。一人で歩み出せた新しい人生ではなく、たくさんの人達の手を借りて成し遂げられたこと。この新しい人生は全てドナーとそのご家族から頂いた大切な、やさしさと思いやりだと思っています。体調に留意し、これからもドナーと共に元気に歩んで行きたいと思っています。

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移植をうける前の3年間の待機期間には、補助人工心臓のポンプが壊れたり、機械が壊れて止まってしまったりといろいろあり、常に死が頭の中にありました。
ポンプのコツコツという音に、時の流れを感じ、朝がくれば今日も生きてるなあと思ったり不安になることもありました。そんな時、いつもそばにいてくれた母や家族そして医療スタッフの皆さんに、本当に心から助けていただきました。移植後は、以前の自由のきかない生活とは全く違い、ショッピングや散歩、旅行へも出かけることができるようになりました。最近、自動車の免許も取ることができました。補助人工心臓をつけていたころに夢にまで見た生活が今おくれていることをとても幸せに思います。そして今まだ、頑張っている大勢の患者さんのためにも、もっとたくさんの人達に移植医療の素晴らしさを知ってもらいたいと願っています。今楽しく毎日過ごすことが出来るのも、ドナーとそのご家族のあたたかい気持ちと理解があってのことだと心から感謝しています。

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私たちは、移植後、知人を通して知り合い、今年入籍しました。結婚したことによっていつも二人になりました。
たまたま私たち二人が移植を受けたことは事実ですが、二人ともが移植者と結婚したいと思っていたわけでは無く、また、結婚も出来るとは思ってもみなかったことです。CMではとても元気そうに映っていて、よく、『移植したようには全然見えない』と言われます。移植前のとてもひどい状態を見て知っている方は非常に喜んでくれますが、パッと見は本当に普通のカップルに見えます。町を歩いていても誰も私たちを移植者とは思わないでしょう。しかし、ここに至るまでには本当に辛い思いをたくさんしてきました。
今の私たちが存在するのも、結婚ができたのも、やはりドナーとそのご家族のお陰としか言いようがありません。移植と言う医療は、そんな私たちをこんなに幸せにしてくれたのです。

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