臓器移植について

レシピエント選択基準

臓器によって異なる選択基準

臓器提供がある場合、移植希望登録している人の中で、提供される臓器に最も適合した人(臓器)が公平、公正に選定されます。各臓器のレシピエント選択基準には、適合条件(腎臓の場合は前提条件)で血液型、サイズ、抗体反応、虚血許容時間などが定められており、その中で、親族、医学的緊急度や血液型による具体的選択方法、術式、年齢、施設の所在地、待機時間などの優先順位が決められています。また、全臓器においてドナー(臓器提供者)が親族優先提供の意思表示をしている場合には、医学的な適合条件などを満たせば親族に優先的に提供することができます。

適合・移植可能な血液型の関係

適合・移植可能な血液型の関係の図

心臓移植

2015年12月15日改正

18歳未満の患者の場合、治療などの状況による優先度のステータス1の条件が緩和されたり、ドナーが18歳未満の場合、登録時18歳未満の患者が優先されるなど、年齢による条件の違いがあります。
また、心肺同時移植が行われる場合の条件もあります。

適合条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
●サイズ
ドナーとの体重差−20%〜30%が望ましい。(小児の場合はこの限りではない)
●抗体反応
リンパ球直接交差試験 陰性
●虚血許容時間
摘出から8時間以内に血流再開することが望ましい

優先順位

●以下①〜③の順に優先順位を決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合
  2. ②治療等の状況による優先度※・・・血液型の適合度/年齢
    1ドナーが18歳以上の場合

    順位 治療等の状況による優先度 年齢** ABO式血液型
    1 ステータス1 60歳未満 一致
    2 適合
    3 60歳以上 一致
    4 適合
    5 ステータス2 60歳未満 一致
    6 適合
    7 60歳以上 一致
    8 適合
    2ドナーが18歳未満の場合

    順位 治療等の状況による優先度 年齢** ABO式血液型
    1 ステータス1 18歳未満 一致
    2 適合
    3 ステータス2 一致
    4 適合
    5 ステータス1 18歳以上60歳未満 一致
    6 適合
    7 60歳以上 一致
    8 適合
    9 ステータス2 18歳以上60歳未満 一致
    10 適合
    11 60歳以上 一致
    12 適合
    • *順位:同順位内に複数のレシピエントが存在する場合には待機期間の長い者を優先
    • **年齢:登録時年齢
  3. ③待機期間・・・下記の期間が長い者を優先

●ステータス1の登録者:ステータス1の状態で登録されている延べ日数

●ステータス2の登録者:ネットワーク登録日から延べ日数

※治療等の状況による優先度:

ステータス1
次の(ア)から(エ)までの状態のいずれか1つ以上に該当すること
  • (ア)補助人工心臓を装着中の状態
  • (イ)大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)又は動静脈バイパス(VAB)を装着中の状態
  • (ウ)人工呼吸管理を受けている状態
  • (エ)ICU・CCU等の重症室に収容され、かつ、カテコラミン等の強心薬の持続的な点滴投与を受けている状態
ステータス2
待機中の患者で、上記以外の状態

心臓移植希望者
(レシピエント)
選択基準

心肺同時移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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肺移植

2020年6月24日改正

適合条件も優先順位も、年齢(18歳以上か18歳未満)や術式(片肺移植か両肺移植)で条件が違います。特に、適合条件のサイズ(肺の大きさ)は、年齢区分に応じ、予測肺活量と術式により評価されます。
また、心肺同時移植が行われる場合の条件もあります。

適合条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
●サイズ
肺の大きさはドナー及びレシピエントの年齢区分に応じ、下記方法で評価する
  1. ① ドナー及びレシピエントがいずれも18歳以上の場合、ドナーの予測肺活量が片肺・両肺移植ともに、-30%以上
  2. ② ドナー及びレシピエントがいずれも18歳未満の場合、ドナーの身長が片肺・両肺移植ともに、-12%以上
  3. ③ ①②に該当しない場合、ドナーの身長が片肺・両肺移植ともに、-12%以上
●抗体反応
リンパ球直接交差試験 陰性
●虚血許容時間
摘出から8時間以内に血流再開することが望ましい

優先順位

●以下の順に優先順位を決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合
  2. ②ドナーが18歳未満の場合は18歳未満のレシピエント優先
  3. ③肺の大きさ・・・ドナー及びレシピエントの年齢区分に応じ、次の⑴~⑶でそれぞれ定める範囲を優先
    • ⑴ドナー及びレシピエントがいずれも18歳以上の場合、ドナーの予測肺活量が片肺・両肺移植ともに、-30%~30%
    • ⑵ドナー及びレシピエントがいずれも18歳未満の場合、ドナーの身長が片肺移植の場合-12%~15%、
      両肺移植の場合-12%~12%
    • ⑶ ⑴⑵に該当しない場合、ドナーの身長が片肺移植の場合-12%~15%、両肺移植の場合-12%~12%
  4. ④血液型・・・適合より一致を優先
  5. ⑤待機期間・・・待機時間の長い者を優先
  6. ⑥肺の大きさ(ドナー及びレシピエント年齢)・・・左記適合条件のサイズ①又は②の場合を優先
  7. ⑦術式・・・両肺移植又は片肺移植(ドナーの医学的状況や上位移植候補者の登録術式によって順位が変更)

肺移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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肝臓移植

2021年11月29日改正

ドナーが18歳未満の場合には18歳未満の患者が優先されます。医学的緊急性により、緊急性が高い病態(ステータスⅠ)が優先され、その次に原疾患名や血液検査データにより算出された値(MELDスコア)の順(ステータスⅡ)となります。さらに同じ順位の場合は待機期間の長い者が優先されます。
また、肝腎同時移植、肝小腸同時移植は、肝臓のレシピエント選択基準に基づいて選ばれた時に受けることができます。

適合条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
※選択時2 歳未満のレシピエントの場合には血液型不適合の待機者も候補とする。
●虚血許容時間
摘出から12時間以内に血流再開することが望ましい

優先順位

●以下の①~③ の順に優先順位を決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合(危険性の高い適合度の場合は除外)
  2. ②以下の通り優先順位を決定する
    1ドナーが18歳以上の場合

    順位 ABO式血液型 医学的緊急性**
    1 一致 ステータス Ⅰ
    2 ステータス Ⅱ
    3 適合 ステータス Ⅰ
    4 ステータス Ⅱ
    2ドナーが18歳未満の場合

    順位 年齢 ABO式血液型 医学的緊急性**
    1 18歳未満 一致 ステータス Ⅰ
    2 ステータス Ⅱ
    3 適合 ステータス Ⅰ
    4 ステータス Ⅱ
    5 18歳以上 一致 ステータス Ⅰ
    6 ステータス Ⅱ
    7 適合 ステータス Ⅰ
    8 ステータス Ⅱ
    • *選択時2歳未満のレシピエントの場合には、血液型にかかわらず、一致と同じ扱い
    • **医学的緊急性
    • ステータスⅠ:緊急に肝臓移植を施行しないと短期間に死亡が予測される病態や疾患群(予測余命1ヶ月以内)
    • ステータスⅡ:MELDスコア(原疾患や定期的に報告された血液検査データにより算出された値)の高い順
  3. ③待機期間・・・同一順位内に複数名のレシピエントが存在する場合には待機期間の長い者を優先する

肝臓移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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腎臓移植

2021年11月29日改正

前提条件は血液型の一致及び適合と抗体反応(リンパ球交差試験)が陰性であることです。優先順位は、ドナーが20歳未満の場合は、選択時20歳未満の方(全国)を優先し、さらに血液型が一致する方が適合する方より優先され、①腎臓提供施設と移植実施施設の所在地(同一都道府県内、同一ブロック内)、②HLA型のミスマッチ数、③待機日数、④無機能腎に関する待機日数の算定の特例、⑤未成年者(16歳未満と16歳~20歳未満に別加点)を点数化し、この合計点が高い順となります。

前提条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
●抗体反応
リンパ球直接交差試験 陰性

優先順位

●前提条件を満たす候補者の順位は以下の順に決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合
  2. ②ドナーが20歳未満の場合は20歳未満のレシピエント優先(全国)
  3. ③血液型・・・適合より一致を優先
  4. ④下記1~5のポイントの合計点数が高い順とする
    1.搬送時間
    腎臓に血流がない時間(総阻血時間)を短くするために提供者発生施設と同一都道府県の移植施設を希望している方のポイントが高い。
    2.HLAの適合度
    提供者のHLA型と適合していない数(不適合:ミスマッチ数)が少ない方のポイントが高い。
    3.待機日数
    長く待機している移植希望者のポイントが高くなる(透析日数ではなく、ネットワークに登録している日数)。
    4.無機能腎に関する待機日数の算定の特例
    移植後3カ月の時点で移植に用いられた腎臓が原因で機能しない、もしくは週1~2回程度の透析が必要な場合は移植によって待機日数を中断することなく、継続するものとみなす。
    5.未成年者
    20歳未満の移植希望者には、ポイントが加算される。
    16歳未満:14点、16歳以上20歳未満:12点

腎臓移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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膵臓移植

2020年2月3日改正

適合条件は血液型の一致及び適合と抗体反応(リンパ球交差試験)が陰性であることです。優先順位は、ドナーが20歳未満の場合は、選択時20歳未満の方を優先し、さらに血液型が一致する方を適合する方より優先し、HLA型のミスマッチ数や待機日数で順位が決まりますが、術式(膵腎同時移植、腎移植後膵臓移植、膵単独移植)によって条件の違いがあります。

適合条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
●抗体反応
リンパ球直接交差試験 陰性

優先順位

●適合条件を満たす候補者の順位は以下の順に決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合
  2. ②ドナーが20歳未満の場合は20歳未満のレシピエント優先
  3. ③血液型・・・適合より一致を優先
  4. ④HLA型のミスマッチ数の少なさ・・・ドナーのHLA型とのミスマッチ数の少ない順に優先
  5. ⑤術式・・・膵腎同時移植、腎移植後膵臓移植、膵単独移植
    ●ドナーから膵臓および腎臓(2腎)の提供がある場合
    膵腎同時移植、腎移植後膵臓移植、膵単独移植の順に優先
    ●上記以外の場合
    腎移植後膵臓移植、膵単独移植の順に優先(膵腎同時移植希望者は除外)
  6. ⑥待機期間・・・待機期間が長い者を優先
  7. ⑦搬送時間・・・臓器搬送に要する時間がより短く見込まれる者を優先

膵臓移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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小腸移植

2010年1月17日改正

適合条件で選ばれた方の中で、医学的緊急度、血液型、待機期間の順に優先されます。

適合条件

●血液型
ABO式血液型がドナーと一致及び適合
●サイズ
体重差は-50%~200%が望ましい。
●虚血許容時間
摘出から12時間以内に血流再開することが望ましい
●基礎疾患
移植希望者(レシピエント)の基礎疾患が良性疾患であること

優先順位

●適合条件を満たす候補者の順位は以下の順に決定する

  1. ①親族・・・親族優先提供の意思表示がある場合(危険性の高い適合度の場合は除外)
  2. ②医学的緊急度・・・ステータス1、ステータス2、ステータス3の順に優先する
    • ステータス1:中心静脈栄養法の維持が不可能になった状態
    • ステータス2:血清ビリルビン値の高値持続と、肝臓障害が進行しつつある状態
    • ステータス3:中心静脈栄養法の維持が不可能となりつつある状態
  3. ③血液型・・・適合より一致を優先
  4. ④待機期間・・・ネットワークに移植希望登録されてからの延べ日数が長い順に優先

小腸移植希望者
(レシピエント)
選択基準

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