臓器提供について

脳死について

脳死と植物状態の
違い

脳は、その構造と機能から大きく3つに分けられます。知覚、記憶、判断、運動の命令、感情などの高度な心の働きを司る大脳と、運動や姿勢の調節をする小脳、そして呼吸・循環機能の調節や意識の伝達など、生きていくために必要な働きを司る脳幹です。大脳、小脳のある程度の損傷は、回復の可能性もありますが、脳幹は、その機能を消失すると生命を維持することができなくなります。

脳死とは、脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。二度と回復することはありません。薬剤や人工呼吸器などによってしばらくは心臓を動かし続けることはできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止します。

植物状態は、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できることが多く、回復する可能性もあります。脳死と植物状態は、全く違うものです。

欧米をはじめとする世界のほとんどの国では「脳死は人の死」とされ、大脳、小脳、脳幹のすべての機能が失われた状態を「脳死」としています。イギリスのように、脳幹のみの機能の喪失を「脳死」としている国もあります。
日本では、脳死での臓器提供を前提とした場合に限り、脳死は人の死とされます。

脳死とは、脳の全ての働きがなくなった状態です。回復の可能性がある植物状態とは全く別の状態です。

脳の障害と蘇生限界

人の死(心臓死)は、①心臓の停止②呼吸の停止③瞳孔の散大(脳機能の消失)という3つの徴候を確認した時点としていました。しかし、医学の進歩により人工呼吸器などが開発されると、本来心臓死を迎える状況でも機械によって呼吸を維持し、心臓を動かし続けることも可能となる場合もみられるようになりました。
脳卒中や脳梗塞、あるいは交通事故などでの頭部外傷などにより、脳に著しい損傷を受けた場合、時間の経過とともにその障害は進行していきます。しかし、さまざまな処置や手術などで治療した結果、回復する人もいれば、植物状態に陥る人もいます。
植物状態になっても薬物治療やリハビリなどで、回復する可能性があります。
一方で、さらに脳障害が進行すると脳を蘇生できる限界を超えて、二度と回復しない「脳死」になり、その後人工呼吸器を使っても多くは数日以内で「心臓の停止」に至ります。

脳の障害と蘇生限界のグラフ

法的脳死判定の検査方法

法的な脳死判定は、以下の6項目を、必要な知識と十分な経験を持つ移植に無関係な2人以上の医師が、2回にわたり法律に基づく検査を行うことが定められています。

法的脳死判定の項目 具体的検査方法 脳内の検査部位と結果
1 深い昏睡 顔面への疼痛刺激(ピンで刺激を与えるか、眉毛の下あたりを強く押す) 脳幹(三叉神経):痛みに対して反応しない
大脳:痛みを感じない
2 瞳孔の散大と固定 瞳孔に光をあてて観察 脳幹:瞳孔が直径4mm以上で、外からの刺激に変化がない
3 脳幹反射の消失 瞳孔に光をあてる 瞳孔が小さくならない=対光反射がない
角膜を綿で刺激 まばたきしない=角膜反射がない
顔面に痛みを与える 瞳孔が大きくならない=毛様脊髄反射がない
顔を左右に振る 眼球が動かない=眼球頭反射がない(人形の目現象)
耳の中に冷たい水を入れる 眼が動かない=前庭反射がない
のどの奥を刺激する 吐き出すような反応がない=咽頭反射がない
のどの刺激(気管内チューブにカテーテルを入れる) 咳き込まない=咳反射がない
4 平坦な脳波 脳波の検出 大脳:機能を電気的に最も精度高く測定して脳波が検出されない
5 自発呼吸の停止 無呼吸テスト
(人工呼吸器を外して、一定時間経過観察)
脳幹(呼吸中枢):自力で呼吸ができない
6 6時間以上経過した後の同じ一連の検査(2回目) 上記5種類の検査 状態が変化せず、不可逆的(二度と元に戻らない状態)であることの確認

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小児の脳死判定

6歳以上は成人の判定基準がそのまま適用されます。また、生後12週未満は法的脳死判定の対象から除外されています。
一方、生後12週~6歳未満の小児については、検査内容は成人とほぼ同じですが、2回行う脳死判定の間隔を24時間以上としています。

年齢による除外 生後12週(在胎週数40週未満の者は、出産予定日から12週)未満の者
体温による除外 6歳未満は35度未満
判定間隔 6歳未満は24時間以上
収縮期血圧
  • 1歳未満 65mmHg以上
  • 1歳以上13歳未満
    年齢×2+65mmHg以上
  • 13歳以上 90mmHg以上

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