肝臓移植を受けられた方と奥様へ

   やわらかな春の陽ざしに若葉が美しい頃となりました。その後いかがお過ごしでいらっしゃいますか。

   私はドナーの母です。

   心のこもったご丁寧なお手紙を頂戴しまして本当にありがとうございました。素晴しいお人柄が偲ばれます。何度も読ませていただき、何度も泣きました。お返事が遅くなり申し訳なく思っております。

 このたび初めてウィルソン病のことを知りました。長い間ご本人はもちろんご家族の方はどれほどおつらく大変でいらっしゃったでしょう。難病にひたむきに向かうお姿に心打たれました。移植後回復に向かっているとのこと、何よりでございます。嬉しく思っております。

 息子は小さい頃から活発によく動く優しい子でした。サッカーや野球などスポーツは何でも好きで大人になってからも観戦に行き、いろんな物を食べながら大声で応援していたそうです。

 気さくな人気者でご年配の方や犬からも好かれていました。幼い子をあやすのが上手でした。人気だけで生徒会長もしていましたよ。いつも自分のことよりも周りを気遣う子でしたから、臓器提供の意思表示カードを携帯していたのは、よく理解できました。

 私達家族は、本人の意思を尊重したいと思いました。こちらの病院から出発する臓器のひとつひとつを、どうぞどうぞお役に立ってほしいと願いをこめ、祈りながら雨の中見送りました。

 私の大切な息子は短い寿命で天に召されました。短い命ではありましたが、豊かな愛情につつまれ、やりたい仕事も精一杯することができました。幸せな悔いのない生涯であったと思います。

 肝臓はもうすでに貴方の身体そのものです。お役に立てていただき貴方にも関係のお世話になった方々にも感謝致しております。ドナーのことは忘れて下さいね。

 どうぞ穏やかに健やかにお過ごし下さいますようにお祈りしております。ご家族の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

 ありがとうございました。

ドナーの母より

 

追伸

息子の趣味は、鉄道(時刻表検定を取っていました)、

旅行(京都や奈良が好きでよく行っていました)、

自転車(サイクリングが好きでした)です。

ドナーファミリーへ送られた、移植者とそのご家族からの手紙はthink transplant Vol.31でお読みいただけます。

 

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