法的脳死判定マニュアル
目次
1 法的脳死判定の際に守るべき事項
T 脳死と判定するための必須条件
U 前提条件
V 除外例
W 生命徴候の確認
X 脳死と判定するための必須項目
Y 法的脳死判定における観察時間
Z 脳死の判定時刻
[ 脳死判定医
\ 家族の立会い
] 脳死判定の順序
2 脳死判定の実施マニュアル
T 書面の確認
U 前提条件の確認
V 除外例
W 生命徴候の確認
X 深昏睡の確認
Y 瞳孔散大、固定の確認
Z 脳幹反射消失の確認
[ 平坦脳波の確認
\ 無呼吸テスト
3 参考資料
T 法に基づく脳死判定実施の手順
U 脳死判定から臓器摘出までのフローチャート
V 参考文献
1 法的脳死判定の際に守るべき事項
法的脳死判定は、臓器提供希望者の書面による意思表示等により可能となるが、本章にお
いては、「厚生省厚生科学研究費特別研究事業『脳死に関する研究班』昭和60年度報告書」、
平成3年2月に公表された「厚生省『脳死に関する研究班』による脳死判定基準の補遺」、
臓器移植法施行規則、同法の運用指針(ガイドライン)等を基礎に、法的脳死判定手続の概
略を記した。これらの項目が、法的脳死判定の際に守るべき事項の骨格であり、これらを
理解した上で第2章「脳死判定の実施マニュアル」を参照することが望ましい。
判断に迷う場合は、厚生省保健医療局エイズ疾病対策課臓器移植対策室(ダイヤ
ルイン:03-3595-2256)に連絡すると、医学・法律的コンサルテーションが可能であ
る。
T 脳死と判定するための必須条件
[1]前提条件を完全に満たすこと。
[2]除外例を確実に除外すること。
[3]生命徴候を確認すること。
[4]脳死と判定するための必須項目(Xに記述⇒本書P.6)の検査結果が全て判定基準と一
致していること。
→[1]〜[3]の条件が満たされない場合は脳死判定を開始しない。
[4]での検査結果が判定基準と一致しない場合はその時点で脳死判定を中止する。
U 前提条件
[1]器質的脳障害により深昏睡及び無呼吸を来している症例
[2]原疾患が確実に診断されている症例
[3]現在行いうる全ての適切な治療をもってしても回復の可能性が全くないと診断される
症例
V 除外例
[1]脳死と類似した状態になりうる症例
1)急性薬物中毒
2)低体温:直腸温、食道温等の深部温が32℃以下
3)代謝・内分泌障害
[2]15歳未満の小児
(臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年厚生省令第78号)では医学的観点から6歳未満の者を除外しているが、法的な本人の意思確認の観点から15歳未満の者の法的脳死判定は行わない)
[3]知的障害者等、本人の意思表示が有効でないと思われる症例
(当面、法的脳死判定は見合わせる)
【注】脳幹反射検査、無呼吸テストの実施が不可能あるいは極めて困難とあらかじめ判
断される症例においては、当面脳死判定を見合わせる。
W 生命徴候の確認
[1]体 温
直腸温、食道温等の深部温が32℃以下でないこと。
[2]血 圧
収縮期血圧が90oHg以上であること。
[3]心拍、心電図等の確認
重篤な不整脈がないこと。
X 脳死と判定するための必須項目
法的脳死判定に先立って、臨床的に脳死と判断する場合には[1]〜[4]、法的脳死の判定
には[1]〜[5]の確認が必要である(具体的実施方法、判定法⇒第2章参照)。
[1]深昏睡
[2]両側瞳孔径4o以上、瞳孔固定
[3]脳幹反射の消失[以下の1〜7の全てを確認する]
1)対光反射の消失
2)角膜反射の消失
3)毛様脊髄反射の消失
4)眼球頭反射の消失
5)前庭反射の消失
6)咽頭反射の消失
7)咳反射の消失
[4]平坦脳波
→聴性脳幹誘発反応の消失:必須条件ではないが確認することが望ましい。
[5]自発呼吸の消失
Y 法的脳死判定における観察時間
第1回目の脳死判定が終了した時点から6時間以上を経過した時点で、第2回目の脳死判定を開始する。
なお、原因、経過を勘案して、必要な場合は更に観察時間を延長する。
Z 脳死の判定時刻
第2回目の脳死判定終了時をもって脳死と判定する。
[ 脳死判定医
[1]倫理委員会等において選任され、下記の条件を全て備えている医師が行う。
1)脳神経外科医、神経内科医、救急医又は麻酔・蘇生科・集中治療医で学会専門医又は学会認定医の資格を持つ者
2)脳死判定に関し豊富な経験を有する者
3)臓器移植に関わらない者
[2]判定は2名以上で行う。
[3]判定医のうち少なくとも1名は、第1回目、第2回目の判定を継続して行う。
\ 家族の立会い
希望があれば、家族の立会いのもとで脳死判定を行う。
] 脳死判定の順序
[1]必要書面の確認
1)意思表示カード等、脳死の判定に従い、かつ臓器を提供する意思を示している本人の書面
2)脳死判定承諾書(家族がいない場合を除く)
3)臓器摘出承諾書(家族がいない場合を除く)
[2]前提条件の確認
[3]除外例の確認
[4]生命徴候の確認
[5]深昏睡の確認
[6]瞳孔散大、固定の確認
[7]脳幹反射消失の確認
[8]平坦脳波の確認
→聴性脳幹誘発反応消失の確認:必須条件ではないが行うことが望ましい。
→[6]、[7]、[8]の相互の順序は問わない。
[9]自発呼吸消失の確認(必ず[5]〜[8]の確認の後に実施する)
[10]脳死判定記録の確認
1)脳死判定の的確実施の証明書(⇒参考資料4、本書P.215)
2)脳死判定記録書(⇒参考資料5、本書P.217)
3)脳死判定の検査結果について、診療録に記載し又は当該記録の写しを貼付する。
2 脳死判定の実施マニュアル
この章は、実際に脳死を判定するに際しての具体的な実施方法及び判定方法を示したものであり、これらの方法は一般的に用いられ、適切な方法であると評価されているものである。
また、脳死判定においてはこのマニュアルに示された実施方法を原則とするが、他の方
法を用いる場合にはマニュアルに示した方法と同等の信頼性及び安全性が確立された方法
を用いる必要がある。
T 書面の確認
本項目については移植コーディネーターにより確認されるものであるが、判定医自身
も確認しておくこと。
[1]意思表示カード等、脳死の判定に従い、かつ臓器を提供する意思を示している本人の
書面
[2]脳死判定承諾書(家族がいない場合を除く)
[3]臓器摘出承諾書(家族がいない場合を除く)
U 前提条件の確認
[1]器質的脳障害により深昏睡及び無呼吸を来している症例
1)深昏睡
ジャパン・コーマ・スケール(JCS):300
グラスゴー・コーマ・スケール(GCS):3
2)無呼吸
人工呼吸器により呼吸が維持されている状態
[2]原疾患が確実に診断されている症例
病歴、経過、検査(CT等の画像診断は必須)、治療等から確実に診断された症例
[3]現在行いうる全ての適切な治療をもってしても回復の可能性が全くないと判断される症例
V 除外例
[1]脳死と類似した状態になりうる症例
1)急性薬物中毒
@周囲からの聴き取り、経過、臨床所見等で薬物中毒により深昏睡及び無呼吸を生じたと疑われる場合は脳死判定から除外する。
A可能ならば薬物の血中濃度の測定を行い判断する。
ただし薬物の半減期の個人差は大きいことを考慮する。
【備考】
急性薬物中毒ではないが、脳死判定に影響を与えうる薬物が投与されている場合
@原因、経過、病態を勘案した総合的判断が必要である。
A可能ならば薬物の血中濃度の測定を行い判断する。
B薬物の血中濃度の測定ができない場合は、当該薬物の有効時間を見計らって脳死判定を行うことが望ましい。
→問題となりうる薬剤
●中枢神経作用薬
・静脈麻酔薬
・鎮静薬
・鎮痛薬
・向精神薬
・抗てんかん薬
●筋弛緩薬
刺激装置で神経刺激を行い筋収縮が起これば筋弛緩薬の影響を除外できる。
2)低体温:直腸温、食道温等の深部温が32℃以下
3)代謝・内分泌障害
@肝性脳症
A非ケトン性高血糖性脳症
B尿毒症性脳症
Cその他
[2]15歳未満の小児
[3]知的障害者等、本人の意思表示が有効でないと思われる症例
(当面、脳死判定は見合わせる)
【注】脳幹反射検査、無呼吸テストの実施が不可能あるいは極めて困難とあらかじめ判断される症例においては、当面脳死判定は見合わせる。
W 生命徴候の確認
[1]体 温
直腸温、食道温等の深部温が32℃以下でないこと。
[2]血 圧
収縮期血圧が90oHg以上であること。
[3]心拍、心電図等の確認
重篤な不整脈がないこと。
X 深昏睡の確認
[1]確認法
以下のいずれかの方法で疼痛刺激を顔面に加える。
1)虫ピンによる疼痛刺激
2)眼窩切痕部への指による強い圧迫刺激
[2]判 定
全く顔をしかめない場合、JCS300、GCS3で深昏睡と判定する。
[3]注 意
1)頚部以下の刺激では脊髄反射による反応を示すことがあるので、刺激部位は顔面に限る。
2)末梢性で両側性の三叉神経又は顔面神経の完全麻痺が存在する場合は、深昏睡の判定は不可能であリ、脳死判定を中止する。
3)脊髄反射、脊髄自動反射は脳死でも認められるので、自発運動との区別が必要である。
@脊髄反射
・深部反射
・皮膚表在反射
・病的反射
A脊髄自動反射
a)誘発刺激
・疼 痛
・圧 迫
・受動運動
・皮膚接触
・温度変化
・膀胱充満
・その他の外的刺激
b)出現部位
誘発刺激が与えられた部位と関連する部位であることが多い。
・下肢への刺激:下肢の屈曲、伸展
・腹部への刺激:腹壁の筋収縮
・上肢への刺激:上肢の屈曲、伸展、拳上、回内、回外
・頚部への刺激:頭部の回転運動
c)自発運動との区別
・反射が認められた場合は、誘発したと思われるのと同じ刺激を加え、同じ反射が誘発されれば脊髄自動反射と判断する。
・ただし、自発運動との区別に迷う場合は脳死判定を中止する。
d)ラザロ徴候
無呼吸テスト中等に上肢、体幹の複雑な運動を示すことがある(ラザロ徴候)が、真の自発運動と誤ってはならない。
4)下記の姿勢・運動は脊髄自動反射とは異なり脳死では認められないため、認められた場合は脳死判定を行わない。
@自発運動
・患者の体に触れる等の刺激を受けていない状態での体動
・顔面への疼痛刺激時の除脳硬直、除皮質硬直以外の体動
A除脳硬直
・頚部付近の疼痛刺激による四肢の伸展、内施、足の底屈
・一肢のみ、上肢あるいは下肢のみの反応では除脳硬直と判定しない。
B除皮質硬直
・頚部付近の疼痛刺激による上肢の屈曲、下肢の伸展、内旋
・一肢のみ、上肢あるいは下肢のみの反応では除皮質硬直と判定しない。
Cけいれん、ミオクローヌス
Y 瞳孔散大、固定の確認
[1]瞳孔径
1)確認法:室内の通常の明るさの下で測定する。
2)判定:左右瞳孔の最小径が4o以上であること。
[2]瞳孔固定:刺激に対する反応の欠如
経過中に瞳孔径が変化しても差し支えない。
Z 脳幹反射消失の確認
●下記の物品の準備が必要である。
・ペンライト
・瞳孔径スケール
・綿棒又は綿球
・耳鏡又は耳鏡ユニット付き眼底鏡
・外耳道に挿入可能なネラトンもしくは吸引用カテーテル
・氷水(十分に冷却された生理食塩水または蒸留水)100ml以上
・50ml注射筒
・膿 盆
・喉頭鏡
・気管内吸引用カテーテル(気管内挿管チューブより十分長いもの)
●眼球や角膜の高度損傷や欠損のある症例で、瞳孔反応や眼球偏位の観察及び角膜への
刺激が不可能である場合、当面の間、下記の項目の確認ができないため脳死判定は行
わない。
・瞳孔散大、固定の確認
・対光反射の消失
・角膜反射の消失
・毛様脊髄反射の消失
・眼球頭反射の消失
・前庭反射の消失
●鼓膜損傷がある症例では、片側のみの鼓膜損傷の症例を含め、前庭反射の確認ができ
ないため、当面の間、脳死判定は行わない。
→但し、眼球、角膜、鼓膜の損傷がある症例において、本項で記述されている以外の
方法、あるいは補助検査等により脳幹反射の消失が確認できるか否かは今後別途検討
されるべきである。
[1]対光反射
1)観察方法
@両側上眼瞼を同時に拳上して、両側瞳孔の観察を可能にする。
A光を一側瞳孔に照射し、縮瞳(瞳孔の動き)の有無を観察する(直接反射)
B光を瞳孔よりそらせ、一呼吸おいた後に再度一側瞳孔に照射し、他側瞳孔の縮瞳(瞳孔の動き)の有無を観察する(間接反射)。
C同様の操作を両側で行う。
2)判定方法
@両側で直接反射、間接反射における瞳孔の動きが認められない時のみ対光反射なしと判定する。
A縮瞳のみならず、拡大や不安定な動きを認めても対光反射ありとする。
[2]角膜反射
1)観察方法
@一側上眼瞼を拳上し、角膜を露出させる。
Aこより状の綿の先端で角膜を刺激する。
B瞬目の有無を観察する。
C両側で同様の操作を行う。
2)判定方法
@両側とも角膜刺激による瞬目が認められない時のみ、角膜反射なしと判定する。
A明らかな瞬目でなくても、上下の眼瞼など眼周囲の動き(筋収縮)が認められた場合は角膜反射ありと判定する。
[3]毛様脊髄反射
1)観察方法
@両側上眼瞼を同時に拳上して、両側瞳孔の観察を可能にする。
A一側頚部に手指あるいは針で痛み刺激を与える。
B両側瞳孔散大の有無を確認する。
C上記の@〜Bの操作を両側で行う。
2)判定方法
@両側とも疼痛刺激による瞳孔散大が認められない時のみ、毛様脊髄反射なしと判定する。
A明らかな瞳孔散大でなくても、瞳孔の動きが認められる場合は毛様脊髄反射ありと判定する。
[4]眼球頭反射
1)観察方法
@両側上眼瞼を拳上して両眼の観察を可能にする。
A被験者の頭部を軽く拳上し、正中位から急速に一側に回転させる。
B眼球が頭部の運動と逆方向に偏位するか否かを観察する。
C頭部の運動は左右両方向で行う。
D頭部の上下の回転は行わない。
2)判定方法
@左右どちらの方向への頭部回転でも両側眼球が固定し、眼球の逆方向偏位が認められない時のみ眼球頭反射なしと判定する。
[5]前庭反射
1)観察方法
@耳鏡により両側の鼓膜に損傷のないことを確認する。
A被験者の頭部を約30°拳上させる。
B被験側の耳の下に氷水を受けるための膿盆をあてる。
C50mlの注射筒に氷水を吸引し、カテーテルを接続する。
D被験側外耳道内にカテーテルを挿入する。
E両側上眼瞼を拳上し、両側の観察を可能にする。
F氷水の注入を開始する。
G氷水注入は20〜30秒かけて行う。
H眼球が氷水注入側に偏位するか否かを観察する。
I50mlの注入が終わるまで観察する。
J同様の操作を両側で行う。
2)判定方法
@両側の外耳道への刺激で、眼球偏位が認められない時のみ前庭反射なしと判定する。
A明らかな偏位ではなくても刺激に応じて眼球の動きが認められた場合は前庭反射ありと判定する。
【備考】
・前庭反射の消失を確認する時は、氷水刺激によるものとし、通常耳鼻科領域等で用いられている20℃の冷水刺激検査、あるいは体温±7℃の温水と冷水を用いた冷温交互刺激検査とは異なる。
・温度刺激検査において、冷風、温風を用いた「エアー・カロリック・テスト」については、現在承認されている機器では、温度刺激が十分でない可能性があるため、脳死判定には用いない。
[6]咽頭反射
1)観察方法
@喉頭鏡を用い十分開口させる。
A吸引用カテーテルなどで咽頭後壁を刺激する。
B咽頭筋の収縮の有無を観察する。
C同様の操作を両側で行う。
2)判定方法
@くり返し与えた刺激にも咽頭筋の収縮が認められない場合、咽頭反射なしと判定する。
[7]咳反射
1)観察方法
@気管内チューブより十分長い吸引用カテーテルを気管内チューブをこえて気管支壁に到達するまで挿入する。
A気管、気管支粘膜に機械的刺激を与える。
B機械的刺激に対し咳が出るかどうかを観察する。
2)判定方法
@くり返し与えた機械的刺激にも咳が認められない場合、咳反射なしと判定する。
A明らかな咳はなくても、機械的刺激に応じ胸郭などの動きが認められた場合は咳反射ありと判定する。
[ 平坦脳波の確認
[1]脳波検査の基本条件
1)導出法
少なくとも4導出の同時記録を単極導出(基準電極導出)及び双極導出で行う。
2)電極取り付け部位
@10−20法による(参照:図1-1)。
A電極取り付け部位は大脳を広くカバーする意味から、例えば両側の下記の部位とする。
・前頭極部(Fp1、Fp2)
・中心部(C3、C4)
・後頭部(O1、O2)
・側頭中部(T3、T4)
・耳朶(A1、A2)
B外傷や手術創がある場合は電極配置を多少ずらすことはやむをえない。
3)電極間距離
@各導出に際しての電極間距離は7cm以上が望ましい。
A距離が足りない場合は1個とばして結合する。
4)検査時間
全体で30分以上の連続記録を行う。
5)脳波計の感度
50μV/20mm以上、時定数0.3の記録を脳波検査中に必ず行う。
6)電極間抵抗
電極間抵抗は10kΩ以下、100Ω以上とする。
7)フィルターの設定
@ハイカットフィルター:OFFまたは30Hz以上
A交流遮断用ノッチフィルター:必要に応じ使用する。
8)検査中の刺激
@呼 名
A疼痛刺激:顔面への疼痛刺激
9)平坦脳波の判定
Hockadayらの分類Vbでなくてはならない。
10)記 録
検査中には下記の項目を脳波用紙上に記入する。
@検査開始時間と終了時間
A設定条件
・感 度
・時定数
・フィルター条件
→設定条件を変更した場合はその旨を記載するとともに、較正曲線を記録する。
B導出法(モンタージュ⇒次ページに例示)


C検査中の刺激の種類
D雑音の原因(参照:図1-2〜1-5)
・心電図
・筋電図
・人工呼吸による体動
・血管上の電極が作る脈波
・振動によるアーチファクト
・痛み刺激によるアーチファクト
・人の動きによるアーチファクト
・その他
11)判定の中止
測定中明らかな脳波活動が認められた場合は脳死判定を中止する。
12)脳死判定記録書に脳波の記録用紙を添付すること。


[2]脳波検査の実施例
(アーチファクト混入を防止し、適切に脳波測定を行うための手引き)
1)検査室の条件
@個室が望ましい。
A簡易的な電極シールドが設置できれば理想的である。
B安定した電源が必要である。
C確実なアースが必須である。
2)脳波計の条件
@プリアンプ付脳波計を用いる。
A独立した電源を用いる。
B電源アースは通常の電力供給システムからとる。
自家発電からの電力供給システムはアースが確実でないことがあり注意。
Cアースは一点アースとする。
それを分枝状に増やすことは可能である。
3)被験者への準備
@患者頭部を壁から離す:商用電源ノイズの防止
A空調の風が頭部にあたらないようにする:電極のゆれによるノイズ防止
Bボディーアース:下記のいずれかを行う。
・電気メスの対極板を患者に装置し、電極ボックスのアースに差し込む。(あらかじめ電極ボックスへ差し込むための接続コードを作成しておく)
・シールド・シートを使用し、アースに接続する。
C計測中は患者に触れたり、患者の近くに寄らない。
D電気毛布は外す。
4)周辺機器の準備
@医療機器は全て3Pコンセント、3Pプラグで接続する。
@ができない場合、及び実行してもノイズが入る場合は下記を行う。
A自動輸液ポンプ等の電源を外し、バッテリー駆動とする。
B電動ベッドの電源を外す。
C必要に応じ一時的に下記を行う。
・心電図モニター、呼吸モニターを外す。
・人工呼吸器を離す。
・電気メスの対極板を用い、ベッドのアースを行う。
・室内の蛍光灯を消す。
5)室 温
@室温を調節し、発汗による基線のゆれを防止する。
6)電極の装着
@頭皮の準備:以下の順序で行う。
・清拭:アルコール類を使用する。
・電極装着部の皮脂除去:ガーゼで擦るか、研磨剤入りペーストを使用する。
・ペーストを皮膚に擦り込む。
・家族の許可が得られれば、電極装着部位の剃毛を行う。
・前額正中部、両側鎖骨部にアースを装着する。
A電極の準備
・第2回目の脳死判定時には電極の装着状態を確認する。
・皿電極を用いることが望ましいが、針電極を用いても差し支えない。
・シールド電極を用いる。
・皿電極の場合、
・コロジオン固定が望ましい。
電極間抵抗が10kΩ以上である時は、当該電極を付け直す。
可能なら電極間抵抗は2kΩ以下にする。
・電極間抵抗を下げることが困難な場合は、導出に使用する2つの電極抵抗値を近似した値に揃える。
B電極の取り付け部位
・10−20法による。
・各導出に際しての電極間距離は7p以上とする。
C電極コード:以下の方法によりノイズが軽減する。
・番号の付いたコードか、異なった色の付いたコードを用いる。
・コードの両端を持って互いにひとまとめに20回程度ねじりあわせる:電磁誘導による交流雑音混入防止とリード線の揺れによるアーチファクト防止
・番号又は色に基づき電極装着部と脳波計入力ボックスの番号を対応させる。
D脳波測定システムの総合的機能チェック法
・脳波記録をオンにする。
・全ての使用電極を順番に鉛筆の先端などで軽く触れる。
・妥当なアーチファクトが生じるかどうか確認する。
7)検査の条件
@心電図の同時計測は必須。
Aハイカットフィルターやノッチフィルターを適宜使用し、商用電源周波数を除去する。
Bアーチファクトが生じた場合は、鉛筆でチャート上に記入する。
・原因が特定できた場合には原因を除去して記録する。
・アーチファクトの客観的証明のために、アーチファクトを再現させ記録することも有用である。
C四肢の筋電図、体動及び人が近づくことによる静電誘導などによるアーチファクトの鑑別法。
・6〜7p間隔で手背においた電極から電気現象を同時記録する。
8)脳波記録の手順例(図1-6)
9)脳波の測定
@Hockadayらの分類Vbであることを確認する。
A心電図及び他のアーチファクトの混入が明確に指摘できる場合はVbであることの判定を妨げない。
10)脳波検査の記録
@検査開始時刻
A検査終了時刻
Bその他必要な事項

\ 無呼吸テスト
[1]基本的条件
1)PaCO2レベル
@テスト開始前は35〜45oHgであることが望ましい。
A自発呼吸の不可逆的消失の確認には60oHg以上に上昇したことの確認が必要である。
ただし80mmHgを超えないことが望ましい。
2)収縮期血圧:90mmHg以上
3)時間経過
PaCO2の適切な上昇が必要であり、人工呼吸を中止する時間の長さには必ずしもとらわれなくてよい。
4)血圧、心拍、酸素飽和度のモニター
テスト中は下記の測定器を装着し、モニターする。
@血圧計
A心電計
Bパルスオキシメーター
5)テストの中止
継続が危険と判断した場合はテストを中止する。
6)実施の除外例
低酸素刺激によって呼吸中枢が刺激されているような重症呼吸不全の症例ではテストを実施しない。
7)実施時期
第1回目、第2回目とも法的脳死判定の最後に行う。
8)望ましい体温、PaO2のレベル
@直腸温、食道温等の深部温:35℃以上
APaO2:200mmHg以上
[2]無呼吸テストの実施法
1)血圧計、心電計及びパルスオキシメーターが適切に装着されていることを確認する。
2)100%酸素で10分間人工呼吸をする。
3)PaCO2レベルを確認する。
おおよそ35〜45mmHgであること。
4)人工呼吸を中止する。
5)6 l/minの100%酸素を投与する。
@気管内吸引用カテーテルを気管内チューブの先端部分から気管分岐部直前の間に挿入する。
吸引用カテーテルは余剰の酸素が容易に外気中に流出するように、気管内チューブ内径に適した太さのものを選ぶ。
Aカテーテルが適切な位置にあることを確認する。
【確認方法例】
・長さの目盛りやX線マーカーのあるカテーテルを使用する。
・胸部X線写真によりあらかじめ位置を確認しておく。
6)動脈血ガス分析を2〜3分ごとに行う。
7)PaCO2が60mmHg以上になった時点で無呼吸を確認する。
8)自発呼吸の有無は胸部又は腹部に手掌をあてるなどして慎重に判断する。
9)無呼吸を確認し得た時点でテストを終了する。
[3]テストの中止
低酸素、低血圧、著しい不整脈により、テストの続行が危険であると判断された場合。
[4]記 録
下記の記録をカルテに記載あるいは貼付し、必要な項目を脳死判定記録書に記入する。
1)テストの開始時間及び終了時間
2)動脈血ガス分析の測定時刻及び結果
3)血圧及びパルスオキシメーターの値の測定結果
4)心電図の測定結果
5)テスト中に認められた異常及びその処置
3 参考資料
本項では、
1.臓器の移植に関する法律(平成9年7月16日法律第104号)
2.臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年10月8日厚生省令第78号)
3.「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)
(平成9年10月8日健医発第1329号)
をもとに、法に基づく脳死判定実施の手順を、経時的に出来るだけ分かりやすく記述した。
判断に迷う場合は、上述の1−3を調べるか、厚生省保健医療局エイズ疾病対策
課臓器移植対策室(ダイヤルイン:03−3595−2256)に連絡すること。
T 法に基づく脳死判定実施の手順
[1]臨床的に脳死と判断する場合は、以下の項目を確認する。(指針第4の1)
1)深昏睡
2)瞳孔径が左右とも4o以上であり、瞳孔が固定していること。
3)脳幹反射(対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射及び咳反射)の消失
4)平坦脳波
[2]臨床的に脳死と判断した場合、臓器提供に関する意思表示カードの所持等、本人が何
らかの意思表示を行っていたかを確認する。(指針第4の1)
家族がいない場合は、本人が書面により脳死の判定に従い、かつ臓器を提供する意思を
表示していることを確認し、日本臓器移植ネットワーク(以下「ネットワーク」とい
う。)に連絡する。この場合、以下の[3]〜[5]の手順は行わない。
[3]臓器提供の意思表示が存在するか、その存在の可能性があり、かつ家族がある場合、
家族に対して、以下の説明を行う。(指針第4の1)
1)臓器提供の機会があること。
2)臓器提供に係る手続きに関しては移植コーディネーターによる説明があること。
[4]説明を聴くことにつき承諾が得られた場合はネットワークに連絡し、移植コーディネ
ーターの派遣を要請する。(指針第4の2)
【(社)日本臓器移植ネットワーク 電話番号 フリーダイヤル:0120−22−0149】
[5]主治医は、家族が希望する場合には、移植コーディネーターの説明に立ち合うことが
できる。(指針第4の3)
[6]主治医は移植コーディネーターより提供される下記の書面を確認する。
1)意思表示カード等、脳死の判定に従い臓器を提供する意思を表示している本人の
書面
2)脳死判定承諾書(家族がいない場合を除く)
3)臓器摘出承諾書(家族がいない場合を除く)
[7]上記書面を確認後、主治医は各提供施設において定められた連絡の手順に従い、脳死
判定医、倫理委員会等に連絡する。
[8]脳死判定の対象者が確実に診断された内因性疾患により脳死状態にあることが明らか
である者以外の者である時は下記の手続きをとること。(指針第11の5)
1)当該者に対し法に基づく脳死判定を行う旨を速やかに所轄警察署長に連絡する。
2)検視その他の犯罪捜査に関する手続きが行われる時は必要な協力をする。
3)なお臓器摘出は手続き終了後に行う。
→捜査機関に対する協力
(臓器移植と検視その他の犯罪捜査に関する手続きとの関係等について
平成9年10月8日 健医疾発第20号)
●当該捜査機関への連絡
・脳死判定予定日時及び場所
・連絡責任者の氏名、住所、電話番号
・その他必要な事項
●書面(写し)の提出
・脳死の判定に従い、かつ臓器を提供する意思を表示している本人の書面
・脳死判定承諾書
・臓器摘出承諾書
・脳死判定の的確実施の証明書
・死亡診断書
・その他必要な書類
●検察官、警察官への便宜
・待機する場所の提供
・患者の病室等へ入室するにあたっての準備
・その他必要な便宜
●検視等を行うにあたっての補助
・検視等への立会い
・生命維持装置等の取扱い
・脳死した者の身体の移動
・その他必要な補助
[9]脳死判定医は、上記の[6]−1)、2)、3)の書面を確認した後、脳死判定を開始する。
(指針第4の4)
[10]脳死判定は下記の条件を備えている医師が行う。(指針第7の1−(4))
1)脳神経外科医、神経内科医、救急医又は麻酔・蘇生科・集中治療医で、学会専門医、又は学会認定医の資格を持つ者。
2)脳死判定に関し、豊富な経験を有する者。
3)臓器移植に関わらない者。
→提供施設において脳死判定を行う者以外に臓器摘出時にドナー管理を行う麻酔科
医等を確保できない場合は、移植コーディネーターにその旨を伝え、摘出チーム
に依頼してドナー管理を行う医師を確保する。
[11]脳死判定医は倫理委員会等の委員会において選定し、下記の項目を求められたら提示
できるようにしておく。 (指針第7の1−(4))
1)氏 名
2)診療科目
3)専門医等の資格
4)経験年数
5)その他の必要事項
[12]脳死判定は上記[10]の医師が2名以上で行う。(指針第7の1−(4))
[13]家族が希望する場合は脳死判定に立会わせることが適切である。(指針第4の4)
[14]第1回目の脳死判定が終了した時点から6時間以上を経過した時点で、第2回目の脳
死判定を開始する。(指針第7の1−(5))
[15]第2回目の脳死判定終了時をもって脳死と判定する。死亡診断書の記載に際しては、
第2回目の検査終了時を死亡時刻とする。(指針第8)
[16]法の規定に基づいて脳死判定を行った医師は、下記の書面を作成してその原本を保管
し、最低5年間保存する。又、1)及び2)の写し各2通を移植コーディネーターに
手渡す。
1)脳死判定の的確実施の証明書(規則第3条)
2)脳死判定記録書(規則第5条)
3)脳死判定の検査結果について診療録に記載し、又は当該記録の写しを貼付する。
(指針第7の3)

V 参考文献
【脳死臓器移植に関する規則および指針】
1. 臓器の移植に関する法律(平成9年7月16日 法律第104号)
2. 臓器の移植に関する法律施行規則(平成9年10月8日 厚生省令第78号)
3. 「脳死の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)
(平成9年10月8日 健医発第1329号)
【文 献】
1. 脳死の判定指針及び判定基準(厚生省厚生科学研究費特別研究事業『脳死に関する研究
班』昭和60年度報告書).日本医師会雑誌,94:1949-1972,1985.
2. 脳死判定基準の補遺(厚生省『脳死に関する研究班』による脳死判定基準の補遺).日
本医師会雑誌,105:525-546,1991.
3. 脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書.神経所見と無呼吸テスト.日本医師会雑誌,
118:855-865,1997.
4.脳死判定基準(いわゆる竹内基準)覚書.補助検査.日本医師会雑誌,119:803-805,1998.