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伊東 順二さん 2001年11月インタビュー
生と死を身近に体感する機会の多かった伊東順二さん。普段は語られることのなかった生と死の問題について語っていただくことができました。
 0歳の時に、腎臓を片方摘出しました。それもあって、臓器移植についての関心は高いし、早く臓器移植医療が発達すればよいのに、と思う気持ちも強かったですね。親も医者でしたから、その気持ちはなおのことだったと思います。
 しかし、僕が腎臓摘出したのは、戦後10年足らずの頃のこと。たとえ大学病院といえど、医療技術はまだまだ未熟でしたから、臓器移植の現実性などほとんどあり得ず、臓器を摘出して終わったことについては、何も思いません。腎臓の方も、1つで2つ分の働きをしなければならないから二倍に膨れ上がっているようですが、がんばってくれているようですよ。
 腎臓を摘出したこともそうですが、出身が長崎県の諫早市で、3歳のときに「諫早大水害」に遭遇し、天井裏に避難しているところを自衛隊に救助されたり、また、原爆の後遺症として友人の何人かが母子遺伝で亡くなったり、あるいは交通事故に何度か遭ったりと、生と死について考えざるを得ない環境や状況にありましたから、いのちに対しては、ある意味客観的にとらえるようになっていると思います。ただ、それは「いのちを軽くみる」というものではありません。むしろ、生と死を身近で体感する機会が多かっただけに、その重みというものは非常に強く感じます。
 だからこそ、最近の事件などにみられるように、人のいのちの尊厳を理解できない人間に対しては、純粋に憤りを感じます。人を殺すことは、その人のもつ可能性をすべてはぎとってしまうことにほかならないわけですよ。それがどれほどの罪であるかが理解できていないから、簡単に人を殺すことができるわけでしょう?だから、罰を与えることは当然だと思うし、また、これから100年かかろうが、いのちの尊厳が理解できる教育をやっていかないとダメだと思いますね。
 美術展の企画はもとより、デジタルキャラクターの今後を考えたり、あるいは、まち作りのプロジェクトに関わったりと、体がいくつあっても足りないくらい様々な分野に興味があって手がけているのが現状です。
 しかし、表現方法は違っても、やりたいことは、何かの感動を人に伝えたい、ということ。「こんなにすごい建築家がいるんだよ」「こんな彫刻家がいるんだけど知ってよ」と、みんなが知らない逸材や感動できることを探しては、それを伝えていきたい。それは、この仕事に就いてからの変わらない僕の姿勢です。何かを伝えるためには、その時代に合った方法を見つけなければならないから、表現方法は変わってきているんですけれど。
 でも、全てにおいての基本は「人と人とのつながり」。それは、いつの時代も同じだと思っています。そういう意味で、これからやりたいことがあるとすれば、ボランティアですね。単純に、何かの役に立つことを、「対価」という概念の外でやりたいと思います。
伊東 順二(いとう じゅんじ)
1953年9月2日長崎県生まれ。

1981年
早稲田大学仏文科大学院修士課程終了後、仏政府給費留学生としてパリ大学およびエコールド・ルーブルにて学ぶ。

1983年
日本帰国まで,仏政府給費研究員としてフィレンツェ市庁美術展部門嘱託委員(1980)、「フランス現代芸術祭」副コミッショナー(1982)などを歴任。その間、原美術館設立参加(1979)、「芸術新潮」での連載(1981開始)などで「ニューペインティング」を日本に紹介。
帰国後、美術評論家、アート・プロデューサー、プロジェクトプランナーとして、展覧会の企画監修、アート・フェスティバルのプロデュース、アート・コンペティションの審査員、また、企業、協議会、政府機関などでの文化事業コンサルタントとしても幅広く活躍。

1989年
株式会社JEXT設立後代表取締役を務める。

1995年
第46回ヴェネチア・ビエンナーレ日本政府館コミッショナー、日本文化デザイン会議'95群馬議長を務める。

1995年〜
ICSカレッジオブアーツ インタラクティブ・アーツディレクション科プロデューサーを務める。

1997年
パリ日本文化会館オープニング企画「デザインの世紀」展 コミッショナーを務める。

1999年〜
日本文化デザインフォーラム副代表を務める。

2000年
文化庁メディア芸術祭企画展<JAM3(ジャムキューブ)>「Robot-ism 1950-2000 〜鉄腕アトムからAIBOまで〜」プロデューサー を務める。
愛知県「21世紀の新しいまちづくり」推進委員・娯楽文化都市専門部会委員長、通産省「21世紀地球EXPO」基本問題構想ワーキンググループ委員を務める。

2001年
文化庁メディア芸術祭企画展<JAM3>「CHARAMIX.com 〜キャラクターに人権を〜」実行委員長兼プロデューサーを務める。
ホームページ http://www3.justnet.ne.jp/~jext/
 

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