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[特集]子供の臓器提供を考える
小さないのちをひたすらみつめる小児病院。
子供の最期は悲しくて辛いが、ご家族の心の悼みはもっと大きい
病気との闘いにも看取りにも、ご家族への温かい支援が不可欠である。
 わが国の乳幼児死亡率は、世界一低く、子どもの死亡は大変珍しいこととなっています。「子どもは死なない」「子どもは死んではならない」というのが、世間一般の認識でもあります。しかし、治療の甲斐なく、近い将来に死を迎えなければならない子供も存在します。小児集中治療室(picu:pediatric intensive care unit)は、大手術後や状態が急変し、呼吸や循環などの全身管理が必要な重症度の高い患者さんが入室されます。そのため、ご家族の不安は大変強く、患者さんと同等にご家族のケアも必要となってきます。私たちの看取りの看護はまだまだ試行錯誤ではありますが、患者さんとご家族が「できる限りのことをした」、医療者には「良く尽くしてもらえた」という思いをもって死が迎えられるような看護を心掛けています。患者さんの死期が近くなると、ご家族へ医師からの説明(主に治療の限界であることや死が避けられないこと)が十分におこなわれます。ご家族がその状況を受けとめられてから、看護としては、ご家族が希望されていることはないかをお聞きします。ソファのある個室にベッドを移して、患者さんが好きな童謡やクラッシック音楽などを流し、患者さんとご家族がゆっくり、静かに過ごせるように配慮しています。picu内の壁は、重症感漂う重苦しい雰囲気を明るくするために、動物や四季の風物でディスプレイをしていますが、個室には、ご家族の心情も配慮してディスプレイが過度にならないようにしています。小児病院の規則として、家族以外の方の面会は制限しているのですが(兄弟でも15歳以下の子供は面会不可)、患者さんの幼い兄弟や学校の友達などの面会は特別に配慮することもあります。また、幼少児の場合は、長期間、人工呼吸器や点滴が身体についていて抱っこをすることができないので、医師、看護婦がそばに立ち会って、抱っこをしてもらうこともあります。お母さんやお父さんに抱っこをされたまま息を引き取る子供もいます。

 亡くなられた後は、お身体をきれいにして家へ帰られるのですが、picuでの治療期間中は、お風呂に入ることができず、なかには、産湯以外には生まれてから一度もお風呂に入ったことがない乳児もいました。死後の処置の際には、可能な限りご家族と一緒にお風呂に入れます。picuに入室する前に関わった病棟の看護婦たちから「お風呂に入れてあげたいので、ぜひ一緒に参加させてほしい」と申し出があり、picuに来て、大勢の人に囲まれ、お風呂に入れて最後のケアをおこなったということもありました。

 昨年、死後に臓器提供された患者さん(aちゃん、9歳、女児)は、picu入室時はすでに意識状態が悪く、意志疎通ができませんでした。ですから、aちゃんが元気なときはどのようなお子さんだったのか、どんな遊びが好きなのかなどのことは、ご家族からのお話を聞く以外にaちゃん自身から直接伺うことはできませんでした。aちゃんは、ナイチンゲールに憧れていて、大きくなったら看護婦さんなりたいと言っていたそうです。病気の人を治したいという気持ちを受けとめたご家族の思いやりと決断を感じることができました。

 私たちがpicuで接する患者さんの多くは、意識状態が不良であったり、苦痛を取るために鎮痛・鎮静剤で眠っているため、動いたり、泣いたり、おしゃべりもしない子供たちなのです。状態が急変して入室する患者さんとは、まだ元気なときの関わりがないため、その患者さんが食事や、遊び、勉強をし、感情をもち、普通に生活を営んでいた子どもであるという認識が薄れてしまうのも事実なのです。aちゃんの場合も初対面でしたので、元気な時の様子をイメージするために写真をベッドサイドに貼ったり、好きなおもちゃを並べたりしました。元気なときの写真を飾ることに対して、ご家族は元気だった頃を思い出してかえって辛いのではないかということも懸念されますが、写真を通じて、ご家族と医療者がコミュニケーションを深めることができました。

 偶然、風船をもらう機会があり、aちゃんのベッドサイドに飾りました。すると、ご両親が大変喜ばれました。「この子は風船が大好きだったんです。普段は何もねだったりしないのに、風船を配っている時などはとてもほしがってたんですよ」ということでした。それからは、たくさんの風船に囲まれて数日間を過ごし、お見送りをしました。亡くなられた時にお父様が来院された時にも、風船のことは大変に感謝され、葬儀の時には、祭壇をたくさんの風船で飾って送られたこともお話しくださいました。

 私たちが、死を迎える患者さん、ご家族に対してなにができるかは、常にケースバイ・ケースであり、さらなる探求が必要な分野であると思います。また、ご家族の精神的ケアに関わることは、看取りの看護の質を高めることにもつながるのではないかと思います。死を迎える患者さん、ご家族に対して、常に誠意をもって接することを心掛けていきたいと思っています。
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「小児救急医療の現場から見る子供の臓器提供」
−阪井裕一
子供の臓器移植q&a
「子供への親身な看護、ご家族への誠意ある支援を」
−佐々木祥子
「我が子の臓器提供を通じて」−武内喜代美
「子供の夢や意思を聞いて欲しい」−高木雅代

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