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移植コーディネーターは、どんな時にも
ドナーとそのファミリーの意思を全うし
命をつなぐことができたと思うことが大切だ。
今の日本の現状は20年前のアメリカを見るようだと言うチャックが
移植医療への熱意とコーディネーターの在り方を語ってくれた。
移植コーディネーターになるということ
臓器提供の可能性を無駄にしない体制作り
臓器提供が実を結ぶ社会とは
移植コーディネーターを目指す人へ
移植コーディネーターになるということ

雁瀬
この来日中、多くの移植関係者がチャックの知識と経験を学びたいと考えているようで、講演会や会合の予定でびっしりですね。移植コーディネーター(Co.)として始まったチャックの仕事は、研究や教育なども加わって大変忙しいようですが。

チャック
1975年から様々な形でアメリカの臓器移植に関わっていて、調査や研究、執筆、教育などをしてきましたが、現在はアメリカ全体の臓器分配を統一的にコントロールしているUNOS(全米臓器配分ネットワーク)の会員組織であるOPO(臓器獲得機構)フロリダ支部のディレクターをしています。このOPOに臓器斡旋の認可が与えられていて、移植Co.が配属されているのです。私の仕事は、移植Co.としての活動が40%、組織の運営関係に30%、州政府の規約や法律などの参画に20%、一般の人・医療関係者への教育に10%という配分になるでしょう。だけど、移植Co.の仕事は24時間体制で、一晩に10回も電話が来ることがあるのでそれだけでも大変なんですよ。

雁瀬
いったいプライベートな時間はあるのですか?

チャック
移植コーディネーターは、プライベートな時間が著しく少なく、普通の社会生活から遠ざかると思っていてもいいかもしれません。しかし、その仕事の意味や充実感からしても、ビジネスというよりも生きがいになるほど自分のほとんどを占めていますね。

雁瀬
臓器提供が多く、家族との時間も重視するアメリカでは大変ですね。

チャック
結婚している人は、家族のサポートがきちんとできることが大切です。僕の奥さんはとても辛抱強くやってくれていると思います。普通の家庭のように規則正しくはできないけれど、逆にフレキシブルに過ごすことができるので、とにかく少しでも多くの時間を家族と過ごすことに努力してきました。だから、続けてこれたかな。

雁瀬
日本でも昨年、脳死での臓器提供が4例あり、移植Co.という仕事が注目されて、システム作りや講演に大変忙しい日々を送っています。最近では、急速に拡充が求められている移植システムの即戦力としての移植Co.を募集すると百倍の応募があります。筆記と実地の厳しい審査を経て採用されていますが、現在の専属移植Co.の数は20人弱です。アメリカではどのくらいですか?

チャック
‘88年よりABTC(米国移植コーディネーター評議会)による資格試験で認定されるようになり、移植Co.数は現在およそ千八百人程度です。3年毎に再認定することが義務づけられています。

雁瀬
チャックがCo.を採用する時のポイントを教えてください。

チャック
アメリカでは、医療関係者や看護婦など医学的知識のある人や脳外傷に詳しく、経験豊かな人、そしてエネルギッシュな人を採用するようにしています。具体的には、ICUなどで働いていて今までも移植と協力関係にあった人で、24時間体制で働ける体力と気力のある人です。もちろん医学的知識やコミュニケーションの能力もテストします。

雁瀬
日本では、経験も体力も必要な仕事柄、若い頃からの育成や研修が求められています。チャックの元にも日本からの移植Co.が研修生として訪れていて、日本の教育にも大きく貢献していただいてますよね。臓器提供が多いアメリカでは、移植C0.の仕事が充分に認知されているのだと思いますが、どのような研修が行われているのでしょうか?

チャック
移植Co.に採用された後は、1週間NATCO(北米移植コーディネーター協議会:‘87年結成)で研修を受けます。その後も年に2回の研修を続けますし、各OPOでも独自の研修プログラムがあります。アメリカでも移植Co.に興味のある人は多いんですが、どれだけ大変な仕事かをきちんと認識している人は結構少なくて、始めてから3週間しかもたない人もいましたよ。もちろん10年以上勤務している人もいますが、平均勤続期間は22ヶ月です。

雁瀬
そんなに短いんですか?経験を積んでこれからという時期に辞めてしまうのは残念ですね。

チャック
採用の時には、最も厳しい状況についても説明するし、それでもやりたいかを確認しているんですが、認識しているつもりでも続かないんです。家族の死に直面した遺族と話をすることや時間的拘束の多さ、体力の限界などいろいろあるのでしょうが、2年以上続けていくには、かなりの時間を割いた教育をして、その意義をきちんと伝えなくてはいけないんです。移植Co.としての自覚に1年、移植医療全体の把握に2年かかります。

雁瀬
知識と意識のバランスが大切なんですね。

チャック
移植Co.は、病院や医師と信頼関係を築かなくてはいけません。臓器提供がある時に主治医やICUのスタッフに「仕事が増えて大変だ」と思わせないように配慮し、病院側のストレスを軽減することが必要ですね。いい信頼関係を作るためには、臓器提供と関係ない仕事も手伝ったりします。もちろん、それが最終的に臓器提供の促進・移植の成功に結びつくんですよ。
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臓器提供の可能性を無駄にしない体制作り

雁瀬
日本では、『法的脳死判定ハンドブック』や『臓器提供施設マニュアル』が昨年11月に出来上がり、細かい指導がされています。法律がとても厳しいので、臓器提供の意思を示していても実際に提供に至るケースは非常に少ないのが現状です。アメリカでも‘98年の移植待機者数が約六万四千人、提供者数が約五千八百人ですから、臓器不足が深刻ですね。

チャック
そうですね。アメリカでは救急医療システムもかなり発達していますから、あらゆる救命治療を尽くしても蘇生しない場合、患者や家族が持つ臓器提供の権利を保障するために、ドナーとなる可能性を探る体制作りが定着しています。医師は、患者が死に近づいたり死亡した場合(脳死を含む)には必ずOPOに連絡することが義務付けられています。医師が脳死だと判断した場合には、家族にその旨を説明して、家族が人工呼吸器による延命治療を必要としないと判断したら臓器と組織の提供の対象となります。その時に本人がドナー登録をしていれば、家族がいなくても臓器の提供に同意があったとみなすことができます。また、家族がいる場合には、確認してから生前の本人の健康状態を聞き、臓器提供ができる可能性を検討します。

雁瀬
日本では考えられないほど、本人や家族の意思を全うできるように臓器提供の可能性が追求されていますね。

チャック
それだけに、移植Co.の任務は重要なんです。医師も協力体制にありますが、本来は家族とのコミュニケーションが得意でない場合が多いので、特別なトレーニングをした移植Co.が出向いて、きちんとした臓器提供に関するインフォームドコンセントをしないといけません。本人と家族の意思を確実に移植医療の成果として結びつけなくてはいけないんです。

雁瀬
国内で臓器の提供を待ちきれない日本人やからだの小さな心臓移植を待つ子供たちが、アメリカで新たな命をいただくことができるのも、それほどに積極的な活動のお陰なんですね。
 
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臓器提供が実を結ぶ社会とは

雁瀬
臓器移植法の施行から2年間で、4人の方々から脳死での臓器提供がありました。アメリカのように日常の医療として根づくにはまだまだ時間がかかりそうですが、今の日本の状況をどう思いますか?

チャック
アメリカの20年前の状況と同じ事が日本でも起きていると感じています。国民の意識や体制作りなどに関しては、直面している状況と問題点は同じですよ。始まりはとてもスローですが、きっとどんどんうまく進んでいって、今のアメリカのようになるのに20年もかからないでしょう。ただし、法律や脳死判定の基準が厳し過ぎたり、移植関係者以外の関心があまりないように感じますね?

雁瀬
アメリカのマスコミや企業などの取り組みはどうですか?

チャック
脳死のことや臓器提供のことを記事や番組、マンガやコメディでも取り上げることを継続することで日常の生活に入り込ませることができましたね。移植の成果を数多く披露し、様々な情報を提供することはとても大切なんです。移植の数が増えれば、友人が移植を受けた話や移植を待つ人の話、臓器を提供した家族の話などが身近に増えて、その事実もさらに多くの人の関心を呼ぶんです。その意味ではアメリカのマスコミは好意的だったと言えるでしょう。企業などは移植を受けて元気になった人達に光を当てる傾向がありますね。たとえば移植を受ける人達(レシピエント)が安心して移植病院の近くで生活しながら待機したり、移植後も家庭に戻れるようにリハビリをする家『マクドナルドハウス』もその例です。レシピエントは基本的に移植病院の問題なので、臓器提供を増やすことに直接結びつくようなことな活動はあまりないですね。

雁瀬
臓器提供が年に六千例もあるアメリカでもまだまだ普及啓発の必要性があるんですね。

チャック
そうですよ。80年代には薬の宣伝パンフレットにネットワークの活動や移植のことを加えてもらったりして大きな変化がありましたが、もっと学校の教育ビデオや病院の待合室で見るビデオを作ったり、製品広告にドナー表示への呼びかけも入れて欲しいですね。一般の人へも医療関係者にも継続した普及活動や教育がとても重要なんです。

雁瀬
臓器を提供する側への働きかけも移植Co.にとって大切な仕事ですね。私も子供の頃からの教育の必要性を感じているんですが…。

チャック
とても大切ですよ。アメリカでは小学校の低学年から科学の授業に組み込まれています。つい最近、5年生の授業に行って臓器移植の話をした移植Co.は45分の予定を大幅に越え2時間も質問攻めにあって帰れなかったことがあります。みんな熱心でよく理解していますよ。

雁瀬
小さい時から考えておくことが、臓器提供を受け入れやすい社会性を創っているんでしょうね。もちろん、その後のフォローアップもあるのでしょうが。

チャック
ドナーになることを考える方法は主に3つあります。“Share your life.Share your decision”というスローガンがあるんですが、家族や友人とよく話し合っておけば、自分の意思が伝わるし、いざという時本人の意思を尊重できるんですね。そういった機会が無い人は、州ごとに違いますが運転免許証に記入しておいたり登録しておくことです。すべての人に臓器提供のオプションがあることを伝えるのも移植Co.の大きな仕事です。

雁瀬
ドナーファミリーのケアにも積極的に取り組まれていますよね。

チャック
ええ。もともとサンクスレターなどを渡して感謝の気持ちを伝えていましたが、この数年はドナーファミリーに対し、政府が費用を負担して国と地域でセレモニーをするなどして、ケアに力を注いでいます。また、町の教会でも命をくれた人すなわちドナーへのミサも行われています。

雁瀬
ドナーファミリーが臓器提供をしたことをどう受け止めていると感じますか?

チャック
多くのドナーファミリーは移植医療に関わったことで支援をしてくれるようになります。OPOと一緒になって普及啓発の活動を広めようと好意的ですよ。大切な人を失った経験や臓器提供への決意などを同じ体験者同士で分かち合うことと、移植した人達からの感謝の気持ちやその成果がきちんと伝わることはとても大切なんです。
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移植コーディネーターを目指す人へ

雁瀬
最後に、チャックの後輩達に熱いメッセージを。

チャック
臓器提供は一人の死によって多くの人に命をもたらすことができる唯一の行為です。それほど有意義なことに関わるとても大変な仕事ですが、これほど見返りが多く、報われる職業は無いでしょう。人は皆、死と直面する時がきます。家族の死に対面した人は悲しみ打ちひしがれるでしょうが、そこにCo.として伺った時に家族が寛容になり、他の家族の悲しみを和らげ、失われる命を救うことができるんです。Co.も悲しみに囚われることもあるでしょう。泣くことも落ち込むこともあるでしょう。そんな時には「ドナーとその家族の意思を全うし、命をつなぐことができた」と思うことが大切ですよ。素晴らしい仕事をしている誇りを忘れないで。

雁瀬
力強くて優しさにあふれたメッセージをありがとうございます。これからも歩み始めたばかりの日本の脳死移植と移植Co.をご指導いただきたいと思います。
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アメリカの移植コーディネーターの数は、CPTC(ドナーコーディネーター)1046名、
CCTC(レシピエントコーディネーター)808名(2000年1月現在)
米国移植コーディネーター チャック(Charles J.McCluskey ,Jr.)
1947年ニューヨーク生まれ。'75年南カロリナ大学卒業。外科助手の資格を得てフロリダ大学、北米移植コーディネーター協議会、サンド社などで移植医療に携わる。'82年から外科助手として、'87年から専属の移植コーディネーターとして移植医療の普及に努め、現在に至る。

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