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[特集]脳死移植の幕開け〜法に基づく初めての脳死移植〜
 臓器を提供したいというご本人のお気持ちを受け、ご家族もその実現を望まれて決意されたあと、臓器の提供を待たれている方に無事に臓器を搬送することもネットワークの大きな仕事です。臓器の血流が停止してから移植を待っている患者さんの中で血流が再開されるまでの時間(総阻血時間)は、心臓で4時間、肺で8時間、肝臓で12時間、腎臓で24時間、角膜48時間です。実際に、搬送に許される時間(搬送時間)はこれより2〜3時間少なくなります。
 心臓摘出チームとして、心臓の移植施設となった大阪大学からは2名の医師が、また協力依頼した国立循環器病センターから2名の医師の同行が決まりました。肺の摘出チームとして、大阪大学の5名の医師が現地に向かいました。大阪大学からの7名は、病院から車で伊丹空港へ。国立循環器病センターの2名と合流して高知空港行ANK405便に搭乗し、約40分で高知空港に着陸。空港からは車で30分後に提供病院に到着しました。

肝臓摘出チームとして、肝臓の移植施設となった信州大学からは7名の医師が長野県消防防災航空隊の所有する防災ヘリコプター「アルプス」で信州大学のグランドを飛び立ち、約1時間で名古屋空港に到着。中日本航空のチャーター機である小型ジェット機(セスナ560サイテーションV)に乗り換えて離陸。約1時間後高知空港に着き、車で約40分後に提供病院に到着しました。肝臓の摘出には北海道大学に協力依頼をしており、2名の医師が札幌から飛行機でほぼ同時刻に到着しています。

腎臓の摘出は、高知県立中央病院3名の医師が車で、角膜の摘出は、高知医科大学4名の医師が車で到着しました。
 移植が可能と診断された心臓、肝臓、2つの腎臓、2つの角膜が順に提供病院を出ました。
心臓は、県警の協力により空港まで交通規制され、パトカーに先導されながらCoが運転する緊急車両にて約20分で高知空港へ搬送。大阪大学の医師3名と国立循環器病センターの医師1名が付き添って高知空港から高知県消防防災航空隊が所有する防災ヘリコプター「りょうま」に乗り、約50分で伊丹空港に到着。空港からは、大阪府のパトカーに先導されてCoが運転する緊急車両で大阪大学に向かい、高速道路の車両規制のお陰で約20分後に到着しました。
搬送時間1時間36分。総阻血時間3時間24分。

肝臓は、県警のパトカーに先導されて、救急車にて約25分で高知空港へ。信州大学の医師5名と北海道大学の医師2名が付き添って、摘出チームを搬送したあとそのまま待機していた中日本航空の小型ジェット機で離陸。約1時間で松本空港に到着し、長野県のパトカーに先導されてドクターカーと救急車に分乗し、約20分で信州大学に到着しました。
搬送時間1時間59分。総阻血時間7時間09分。

2つの腎臓は、県警のパトカーに先導されてCoがタクシーで約25分かけて空港へ。
東北大学に搬送される腎臓は、高知空港からJAL126便に乗り、約70分後に羽田空港に到着しました。新幹線で東京まで受け取りに来ていた東北大学の医師と日本臓器移植ネットワーク東北BCのCoがタクシーで羽田空港に行き、受け取りました。2人は東京駅発新幹線「なすの257号」に乗り、約1時間かけて那須塩原駅に到着。タクシーに乗り換え、栃木県、福島県、宮城県の県警パトカーに次々と先導され、約90分で東北大学に到着しました。
搬送時間7時間20分。総阻血時間11時間08分。

国立長崎中央病院に搬送される腎臓は、高知空港発伊丹空港行のANK416便に乗り、約40分で伊丹空港に到着。近畿BCのCoが受け取り、自ら運転する緊急車両で約55分かけて新大阪駅に着き、「のぞみ27号」に乗って約2時間20分後に博多駅に到着。九州・沖縄BCのCoが運転する緊急車両に乗り換え、福岡県、佐賀県、長崎県の県警パトカーに次々と先導され、約90分で国立長崎中央病院に到着しました。
搬送時間7時間10分。総阻血時間11時間44分。

角膜は、車にて摘出チームが持ち帰り、約20分後に高知医科大学に到着しました。
 搬送費用は、交通費の実費を原則として移植を受ける側が負担します。
腎臓の搬送費用は、今まで行われていた心臓停止後の腎臓移植と同様に実費が移植を受けた患者さんに請求され、後に請求すれば還付されます。

今回、心臓と肝臓の搬送に県のヘリコプターも使用されていますが、ヘリコプターは普通、1時間で90円/リッターの燃料を約480リッター必要とします。搬送に使ったヘリコプターの費用については、往復2時間の実費(燃料費)と隊員出場手当て、旅費として約9万円が長野県からネットワークに、高知県からは実費(燃料費)と搭乗員手当て、旅費を含めて約15万5千円がネットワークに請求され、ネットワークの交付金の規定に基づき支払われています。今回は、その搬送に使った他の交通費とともに、大阪大学と信州大学に請求されますが、患者さんの負担については決まっていません。

また、肝臓の搬送に使ったチャーター機は普通、1時間のフライトにつき約60万円、待機時間は約40万円といわれています。今回の、名古屋―高知―松本―名古屋の2時間30分のフライトにおよそ2時間の待機時間及び乗員出張経費を加えて換算すると約250万円になりますが、中日本航空の特別の配慮により、約100万円がネットワークに請求されています。これは、患者さんの実費負担が原則ですが、今回は信州大学の研究費用として同大学から支払われる予定です。

臓器搬送は、原則としてまずネットワークの緊急自動車または定期便や新幹線などの公共交通機関を使うことになっています。しかし、その範囲での搬送が時間的に間に合わない場合には、民間の航空会社が運行するチャーター機を使います。さらに、それでも間に合わない場合には、地方公共団体が保有する緊急車両やヘリコプターを要請します。

今回は、人命に関わる緊急事態として自治体や航空会社が非常に協力的であったことに加え、天候が穏やかであり、全国で唯2ヶ所だけ防災ヘリコプターを自主運航している高知県と長野県が関わるという場所の条件や、機材が点検や他の業務で使われていなかったことなどの好条件に恵まれたことで、予想を越えたスムースな搬送が行われました。この場を借りて関係者の方々に心より御礼申し上げます。
MEMO
高知県消防防災ヘリコプター
シコルスキーS−76B「りょうま」(JA6759)
平成8年4月に就航。運航は操縦士、整備士を県職員として採用する自主運航方式。漁業の盛んな土地柄、海難救助も多く、平成11年1月には墜落した米海兵隊パイロットを救出。また。平成10年秋の豪雨災害では、1日で29名を吊り上げ救助し、消防庁長官表彰を受けている。

長野県消防防災ヘリコプター
ベル412EP「アルプス」(JA98NA)
平成9年11月就航。自主運航。山岳救助や林野火災の他、長野オリンピックでも活躍した。肝臓移植施設である信州大学が松本市にあるため、これまでにも臓器搬送シミュレーションや岡山大学病院へ生体肺移植を受ける患者さんの搬送を行ったことがある。
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■搬送
移植コーディネーター手記「初の脳死移植に寄せて」

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